AIの急速な進化により、Webライターの役割が大きく変わりつつあります。
特に、Webライター初心者の方の中には、こんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
- 「AIに仕事を奪われてしまうのでは?」
- 「AIをどのように活用すれば良いのだろう?」
本記事では、AIがWebライターの仕事に与える影響を考察した上で、AIを味方につける方法をお伝えします。
Webライターとしての将来に不安を感じている方はもちろん、執筆のスピードが遅くて悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
AIはWebライターの仕事を奪うのか?
結論から言うと、AIはWebライターの仕事を奪わないと思います。
もちろんライティング業務の一部はAIに代替されるでしょうが、Webライターへの需要はなくならないでしょう。その理由は主に2つです。
AIは経験に基づいた文章が書けない
人間にできてAIにできないこと。それは文章に「経験」を含めることです。
そして著者自身の経験、あるいは第三者の経験を伝えるような文章は、Googleから評価されやすく、結果的に上位表示に貢献します。
このことはGoogleの検索評価ガイドラインやGoogleセントラルブログで言及されました。
こちらの英文のポイントを要約すると…
「記事を書く人がそのトピックに関して実際に体験したことがあるかを重視する。経験者が書く文章と未経験者の文章なら、前者の方が信用できるし、読者の役に立つ。」
となります。
さらにGoogle検索セントラルブログを見てみると、著者自身の経験以外に、他の人の経験を伝えることも評価の対象になることが読み取れます。
このたび、検索結果の評価を改善するために、E-A-T に E(経験)を追加しました。つまり、実際に製品を使用している、実際にその場所を訪問している、誰かが経験したことを伝えているなど、コンテンツにある程度の経験が織り込まれているかどうかも評価されます。
《出典》:品質評価ガイドラインの最新情報: E-A-T に Experience の E を追加
いずれにしてもGoogle自らが経験の重要性を公表しているのです。
したがって、将来的に人間のWebライターが淘汰されたり、AIで自動生成された記事ばかりになったりすることは考えづらいです。
情報の正確性に欠ける
AIツールは、一見説得力のある文章を生成することができます。しかし、その内容は必ずしも正確ではありません。YouTubeなどで、AIが的外れな回答をしている動画を見たことがある方も多いでしょう。
また、AIツールに関連した重大な事件も発生しています。アメリカ・ニューヨーク州の弁護士が民事訴訟に使う提出資料の情報源としてChatGPTを活用した結果、存在しない判例を引用してしまいトラブルになりました。
《参考》:ChatGPTで資料作成、実在しない判例引用 米国の弁護士
今後はAIの回答精度も上がっていくでしょうが、100%の精度を期待するのは現実的ではありません。そして記事作成をAIに丸投げすることは誤情報の拡散に繋がりかねない危険な行為です。
便利なツールではありますが、結局は人間のファクトチェックや修正作業が必要不可欠だと言えるでしょう。
このような諸々のリスクや手間を省く意味でも、はじめからWebライターに任せたいという発注者は多いと思います。
したがって、Webライターの役割が変化することはあっても、仕事全般が奪われるような事態は起こらないと考えています。
WebライターがAIを活用するメリット
ここまではAIのデメリットを中心にお話ししました。ただ、それはWebライターの仕事を奪うかどうかという話をするためです。
基本的に、AIはWebライターにとって強力なパートナーです。私も案件でAIを活用してきましたが、以下のようなメリットを感じました。
リード文や「まとめ」を作ってくれる
私が苦手な作業の1つは、記事冒頭のリード文や最後のまとめを考えることです。
大抵の案件で文字数は200字程度に過ぎないかと思いますが、記事全体の要点を整理するのは簡単ではありません。
この地味で難しい作業を、AIなら数秒でこなしてくれるのです。
AIを使ったリード文・まとめ文の作り方
まずはリード文とまとめだけを残して、記事本文を書き終えましょう。細かい校正は納品直前で問題ありません。
本文全体をAIツールにコピぺ。それを基にまとめを考えてほしいと伝えます。
なお、図中の黄色枠の部分には「以下のブログ記事の内容を基に、200字以内のまとめを考えていただけますか?」と記載してあります。
先ほどと同様に本文全体をAIツールにコピぺ。それを基にリード文の執筆を依頼します。
この順番にしているのも意味があります。
先ほど「経験」の重要性についてお話ししましたが、Googleはオリジナリティがあり、高品質なコンテンツを評価するからです。
《参考》:AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス
例えば、いきなりリード文の作成をAIに任せてしまうと、ネット上にある情報の寄せ集めになってしまうでしょう。Googleからはオリジナリティのない低品質な記事だと判断される可能性が高いと思います。
一方で先に記事本文を作っておき、それを基にリード文やまとめ文を作ってもらえば、そういったリスクは減らせます。
もちろん出力された文章を確認する必要はありますが、かなりの時間を節約できるでしょう。
文章のクセを正してくれる
AIは私たちの文章の読みにくい部分を見つけ、改善してくれます。
誰にでも文章のクセはありますが、それが読みにくさにつながったり、時には稚拙な印象を与えます。よくあるクセの例をいくつか確認していきましょう。
- 語尾が偏る
(「〜です。」「〜ました。」の連続) - 接続詞を使いすぎる
(「そして」「しかし」「ですが」の多用) - 冗長な表現
(「〜することができます」を「〜できます」と簡潔に言えない) - 主語を省略しすぎる
(誰が何をしているのかわかりにくい) - 長文を多用する
(一文が長すぎて読みづらい) - 同じ言葉を繰り返す
(「とても」「非常に」などの強調表現の頻出) - 受動態を多用する
(「〜される」「〜られる」が多く、回りくどい) - 話し言葉が混じる
(「〜なんです」「〜みたいな」などのくだけた表現)
私はChatGPTのようなAIツールが登場する以前、これらのクセを手作業で直していました。
下図のチェックリストを作り、書いた文章を一つ一つ確認していたのです。この作業には数十分かかっていました。
AIを使えば、このチェックが数秒で完了するのです。
文章全体を添削してもらうこともできますし、特定の問題(例えば語尾の偏り)だけを直してもらうことも可能です。
また、編集者やクライアントからフィードバックをもらったら、その内容に沿って文章を修正するようAIに依頼するといった使い道もあります。
なお、日本語生成能力や文章校正の能力に関してはClaude3(クロード)が群を抜いていると思います。良ければ無料版からお試しください。
情報収集をサポートしてくれる
情報収集は、Webライティングにおいて非常に重要かつ時間のかかる作業です。
特にWebライターになりたての頃は、なじみのないジャンルの記事を書くのがほとんどだと思います。自分にとって未知の情報を、素早く仕入れなければなりません。
AIは、この情報収集の手間を大幅に削減してくれます。2024年現在、私が情報収集におすすめするAIツールは、ChatGPT、Perplexityの2つです。
ChatGPTとPerplexityの比較
(※2024年8月時点のデータを基にしています)
ChatGPT | Perplexity | |
共通点 | URLの読み込みに対応。 (ChatGPTは有料版のみ可) | |
強み | 様々な用途に対応可能 | 回答の出典元が明記される |
料金 | ・無料プラン ・有料(月額20ドル) | ・無料プラン ・有料(月額20ドル) |
これらは指定したURLの情報を読み込めるのが特徴です。
例えば、狙っているキーワードで上位表示している5〜10つのサイトのURLを全て読み込んでもらい、それぞれの記事の要約を依頼すれば…
- 想定読者の知りたいことは何か
- どんな情報を提供すべきか
といった情報を素早く確認できます。実際のプロンプトは以下の画像のようなイメージです。
また、執筆ジャンルに関する知識が少ない場合、「〜について教えてください」と尋ねれば、分かりやすく教えてくれます。
従来のようにGoogle検索で1サイトずつ地道にリサーチするのも良いですが、AIツールを併用すれば、さらに効率的に情報収集ができます。
文章を膨らませるアイデアをくれる
ほとんどのライティング案件では、クライアントから特定の文字数が指定されています。
ただ、Webライターの仕事を続けていると「これ以上書くことがない。文字数が足りない。」といった場面に直面することは多いです。
そんなとき、AIツールが文章を膨らませるためのアイデアを提供してくれます(プロンプトの例は後述します)。
なお、文章を膨らませる際に効果的なのは、以下のような要素を追加することです。
- エビデンス…説得力を高める
- 具体例…読者の理解を助ける
- 補足情報…同上
AIツールは、これらの要素に関するアイデアを豊富に提案してくれます。
アイデア出しに強いAIツールはChatGPTです。これは私の感覚になってしまいますが、細かすぎず、大雑把すぎず、良いバランスの提案をしてくれます。
また、こちらが曖昧な質問をしたとしても、文脈から意図を理解して回答を返してくれます。誤った情報を出力することはありますが、アイデアマンとして素晴らしい能力を持っていると思います。
AIツールの使い分けとしては…
具体例を増やしたい場合
→ChatGPTやClaude3
エビデンス(出典元)を追加したい場合
→Perplexity
というように、目的に応じてAIツールを使い分けると良いでしょう。
もしも予算が限られていてAIツールを一つしか選べないなら、総合的な性能から見てClaude3がおすすめです。
アイデア出しはもちろん、日本語の文章生成や校正も得意なので、作業効率を大幅にアップできます。
案件タイプ別:AIの活用方法
ライティング案件の形式はさまざまです。案件の種類に応じて、AIの使い方も異なります。ここでは主な案件タイプ別に、AIの活用方法を見ていきましょう。
原稿執筆のみの案件
このタイプの案件では、タイトルや見出しを含む文章の大筋が既に決まっています。AIを効果的に活用するには、以下の手順がおすすめです。
- AIによる情報リサーチ
- 情報を基に文章作成
- AIに読みやすい文章に修正してもらう
各見出しに関する情報をAIに調べてもらいます。例えば、「ニンジンの育て方」というタイトルの記事を依頼されたとします。
記事内の「畑の準備」という見出しの内容について情報収集するならば…
- キーワード「ニンジン 育て方 畑の準備」でGoogle検索
- 検索上位5〜10サイトのURLをメモ
- AIに以下のようなプロンプトを伝える
以下のURLは「ニンジン 育て方 畑の準備」というキーワードで上位表示された記事です。内容を読み取り、それぞれ要約してください。
1.https://〜〜〜〜
2.https://〜〜〜〜
3.https://〜〜〜〜
この方法で、初めてのジャンルでも素早く網羅的な知識を得られます。
おそらく畑の準備以外の情報も返ってくると思いますが、追加で質問をしていけば欲しい情報が手に入ります。
同じ要領で読者の検索意図(読者が欲している情報)などを調べることも可能です。
収集した情報とクライアントの指示を基に執筆します。なお、コピペに近い文章になるのを避けるため、私は以下を意識しています。
- 情報収集が終わったら、できるだけ何も見ずに書く
- オリジナリティが不足する場合は、上位サイトにない情報を追加する
(AIに「上位サイトに不足している情報はありますか?」と尋ねるのがおすすめです)
なお、このような案件では自身の経験を盛り込みづらく、Googleの品質基準を満たすコンテンツを作るのは難しいかもしれません。
ただ、Webライターの第一目標はクライアントの要望に沿って、期日までに成果物を納めることです。
上位サイトとの差別化を図ろうとするあまり、指定されたテーマから逸脱した文章にならないよう気をつけてください。
Claude3などに文章を貼り付け、読みやすく修正してもらいます。情報の正確さを確認できたら完成です。
タイトルと概要のみが提供される案件
記事のタイトルと方向性のみが決まっている案件です。見出しや構成などはWebライター自身が考えるので、やるべき作業は多いです。このタイプの案件でAIを活用する場合、以下のような手順が考えられます。
- 競合サイトを分析する
- 見出しを考える
- 執筆する
- AIに添削を依頼
AIに以下のようなプロンプトを伝えて、見出しや構成作りのヒントを得ます。
以下5つのURLは「〜〜〜」というキーワードで上位表示されるサイトです。これらの記事の内容を要約してください。また、読者の検索意図を教えてください。
1.https://〜〜〜〜
2.https://〜〜〜〜
3.https://〜〜〜〜
★補足
競合サイトとは、狙っているキーワードで上位表示されるサイト群のことです。
上位表示されている要因は様々ですが、多くの場合は読者の検索意図を把握し、要望に応じた高品質なコンテンツを提供しています。
そのため、競合サイトの記事を調査して、読者が求めている情報を分析する作業は欠かせません。
従来であれば上位表示サイト(5〜10位くらい)の目次やイントロ、結論部分に一通り目を通して検索意図を把握するといった作業が必要でした。
この部分をAIにサポートしてもらいます。
タイトル以外の見出し、小見出しを決めていきます。
先ほどの分析結果を踏まえて、読者の検索意図、求められている情報に応えられるような構成にしてください。
クリエイティブで難しい作業ですが、自力でできなくても問題ありません。ここでもAIに相談してみましょう。
以下はプロンプトの例です。
こちらのタイトルと検索意図を基に、見出しを作ってください。上位サイトに不足している情報があれば、見出しに含めてください。
このようなアイデア出しの作業はChatGPTが得意です。
見出しに沿って文章を執筆していきます。
文字数が不足する場合には、エビデンスを足したり、具体例を増やしたりする方法がおすすめです。
何らかのエビデンスが必要ならPerplexity、具体例を増やしたいならChatGPTにお願いすると良いでしょう。
文章が一通り完成したらClaude3に添削をお願いしましょう。
やや詩的でお洒落な文章が返ってくる印象もありますが、やはりClaude3の日本語生成能力は抜群だと思います。
あとは自分の目で間違いがないか確認し、必要に応じて手直しをしてください。
リライト案件
他のライターが作成した文章を手直しする案件です。新たな見出しを作ったり、内容を変更したりします。また、読みにくい部分をまとめ直すように依頼されることもあります。
本質的には上の「タイトルと概要のみが提供される案件」や「タイトルと概要のみが提供される案件」と同じような作業です。クライアントの指示に従いつつ、困ったことがあればAIに相談してください。
以下にAIを活用した対応例を示します。プロンプトは後述しますので、そちらをご確認ください。
リライトの対応例1:新しい見出しを作る
競合サイトをAIに分析してもらい、読者の検索意図を把握。また、競合サイトに欠けている情報がないか質問する。これらの情報を基に見出しを追加する。
リライトの対応例2:内容の変更
クライアントから何らかの指示があるはずなので、それに応じて内容を変更する。文章量が足りなければ、AIを使ってエビデンスや具体例を追加する。
リライトの対応例3:読みにくい部分の修正
該当部分をAIツールにまとめて貼り付けて、分かりやすくまとめ直すよう指示する。これはClaude3が得意な作業。
AIで執筆効率を上げるプロンプト7選
最後に執筆効率を高めるためのプロンプトの例をいくつかご紹介します。
もしも的確な回答が返ってこない場合は、追加で質問をするか、別のAIツールを試してみてください。
情報収集や構成立案に便利なプロンプト
<プロンプト1:読者の検索意図を把握する>
以下の5つのURLから、読者の検索意図をそれぞれ読み取ってください。
(ここに競合サイトのURLを羅列する)
※URLの読み取りが得意なのは、ChatGPTです。
<プロンプト2:競合との差別化のヒントを得る>
以下は「〜〜〜」というキーワードで検索上位表示されるサイトです。
検索上位サイトに不足している情報を指摘してもらえますか?ブログ記事執筆のヒントにしたいです。
<プロンプト3:記事タイトルや見出しの提案>
上にある読者の検索意図と、検索上位サイトに不足している情報を基に、ブログ記事を書きたいです。タイトルと見出しをいくつか提案してくれますか?
なお、タイトルには「〜〜〜」というキーワードを含めてください。
※こちらはプロンプト1と2を合わせて使ってください。
文字数の不足を補うプロンプト
<プロンプト4:具体例を増やす>
ブログ記事を書いています。以下の文章の具体例をいくつか提示してください。
(ここに膨らませたい箇所の文章を貼り付ける)
<プロンプト5:エビデンスを増やす>
ブログ記事を書いています。以下の文章の根拠となるソースを提示してください。
(ここに膨らませたい箇所の文章を貼り付ける)
※ソースを提示できるのはPerplexityです。
自分の記事を要約してもらうプロンプト
<プロンプト6:リード文を書いてもらう>
以下のブログ記事の内容を基に、200字以内のリード文を考えていただけますか?
(ブログ記事全文をここに貼り付ける)
<プロンプト7:記事のまとめを書いてもらう>
ブログ記事の最後に、まとめ(記事全体をまとめた文章)を付け加えたいと思っています。
以下のブログ記事の内容を基に、200字程度のまとめを作ってください。
(ブログ記事全文をここに貼り付ける)
まとめ:AIはWebライターの味方
AIはWebライターの仕事を部分的に代行しますが、完全に奪うことはありません。
個人の経験に基づいた文章はGoogleから評価されやすいですし、情報の正確性を担保するには人間による最終チェックが必要となるためです。
また、これからのWebライティングでは、AIを執筆パートナーとして活用することが大切です。AIはリード文やまとめの作成、文章校正、情報収集、アイデア出しなどでWebライターをサポートします。
各種のAIツールを適切に使い分けて、より効率的に執筆していきましょう。